編集者の高橋です。
今回は貴腐ワインに対する思いを登美の丘ワイナリーの栽培家と醸造家の2名にお話をお伺いしました。
まずは、栽培家の大山さん(以下、敬称略)

※写真は貴腐ぶどうの畑で作業をしている大山さん
改めて貴腐ワインの原料について教えてください。
原料の貴腐ぶどうはボトリティス・シネレア菌というカビがぶどうに付着することによってできます。付着すると、ぶどうの果実から水分が蒸発し、干しぶどうのようになるので、糖分がとても凝縮されています。
貴腐ぶどうをつくるにあたり、他のぶどうと違ったことをしていますか?
一度に房全体が貴腐化するのではなく粒ごとに進んでいくため最終的には粒ごとの状態をみて発酵に供すことができるか、できないかを選果していきます。また糖度分析は貴腐化が進むとペースト状(糖度60°超)になり簡易糖度計では計測が難しくなるため貴腐化していない粒と混合させて計測し、その結果から推定するということを行っています。
糖度60度を超えるなんて想像がつかず、早く飲みたい気持ちになってきました。
ぶどうが貴腐化している、していないはどう判断してますか?
ある程度は見た目で判断できますが他の病気、例えば発酵性腐敗(酢酸様の香りを有する)と合併症になっていると不適のため1房1房、1粒1粒香りを嗅いで判断しています。
1房1粒ずつ嗅いでチェックしているのですね。とても丁寧な作業で大変な苦労をうかがえます。
では、 収穫するまでどんな点に気を使いますか?
(大山)
貴腐化したとしても時期が早すぎると目標糖度に到達しない、もしくは収穫までに乾燥が過剰に進み駄目になる(粒がカラカラになる)ため適切な時期に貴腐化し、濃縮・収穫ということができるかどうかを観察しています。
また、特に貴腐ワインはぶどう粒の中で造られると言われていますが、濃縮度が高まるフェーズの味わいについて最終的なワインを想定しながらぶどうの食味、収穫判断をしています。登美の貴腐は濃厚で力強いスタイルをイメージしています。
収穫するまでかなり神経を使っているのですね。
貴腐化されるということで、収穫はどれくらいの時期にされるのでしょうか?
(大山)
貴腐化の状態を見ながら収穫を進めるため2021年ヴィンテージは3回(10月下旬、11月上旬、11月中旬)に分けて行いました。
少し遅めの収穫ですね。2021年ヴィンテージが出来上がるのが楽しみです!
出来上がったときに感じる思いなどがあれば教えていただけますか?
(大山)
全てのワインがそうだと言われるとそうですが、特に自然の力を無くしては造ることが出来なくそこへの祈り(頼むぞのような)が大きいワインかなと思っています。また過去の先輩たちの経験(成功や失敗)なくしては造れないのでそれに対する尊敬も強く感じます。そのため出来た時にはワインをつくる様々な要素に対して「感謝」の気持ちが大きいかもしれません。
最後に、大山さんのおすすめの飲み方があれば教えていただけますか?
(大山)
合わせるものとしてフランスではフォアグラやブルーチーズなど強い食材と合わせることが有名ですが、ソーテルヌ(フランス・ボルドー地方)地元のご夫婦がお昼ご飯として少し軽めの貴腐ワインを飲みながら「ただ茹でただけのエビ」を合わせており、貴腐ワインが日常に溶け込んでいたシーンがとても印象的でした。個人的には貴腐ワインと山梨県名産の「枯露柿」という干し柿にクリームチーズを挟み、ほんのちょっと黒胡椒をかけて合わせてみましたが絶妙でしたね。誇るべき日本のドライフルーツです。
続いて醸造家の吉野さん(以下、敬称略)にお伺いします。

他のワインの醸造と違うところはありますか?
(吉野)
干しぶどうなので、圧搾に時間がかかります。丁寧に時間をかけて搾汁してます。糖度が高くて醗酵に時間がかかるため、醗酵期間の温度管理に気を配ってます。温度が低いと醗酵がすすまず、高いと香りが失われてしまうためです。
普通の白ワインなら2週間で醗酵おわりますが、貴腐は1ヶ月くらいかかります。
栽培に時間がかかる貴腐ぶどうは、やはり醗酵にも時間がかかるのですね。
ということは熟成期間も比例して長いのでしょうか?
(吉野)
糖度が高いため長期熟成します、
長く熟成することで糖分と旨味成分がメイラード反応し、カラメルのような甘さのある香りがでます。
これはジャムと同じですね。
なるほどジャムとも少し似ているのですね。
お2人とも貴重なお話、ありがとうございました!!
ますます貴腐ワインが気になってきた編集者は、
登美の丘ワイナリーでテイスティングができる(有料)ということで、夕暮れの富士山を眺めながら1杯いただいて帰りたいと思います。
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