日本ワインの発祥の地として知られる山梨県。
ワイナリー数や日本ワインの生産量は、ともに日本一の規模を誇ります。
そんな山梨県で造られるワインは、日本らしい繊細で上品な味わいが特徴。
権威ある国際ワインコンクールで受賞を果たすなど、国内だけでなく世界からも高い評価を得ています。
この記事では、ソムリエ監修のもと、日本が誇る山梨県産ワインの基礎知識や選び方、おすすめの山梨県産ワインをご紹介します。
山梨県産ワインの基礎知識
山梨県は、2013年に日本で初めてワインで地理的表示(GI)制度の認証を受けました。
GIとは、その地域で一定の基準を満たして生産されているかどうかを国が認証し、その品質を証明してくれる制度です。
個性豊かなさまざまな味わいのある高品質なワイン、ぶどう栽培に適した理想的な環境、100年以上の歴史を持つことなどが、山梨県のワインがGI認証を受けた理由とされています。
これにより「GI Yamanashi」という地理的表示付きワインが誕生し、山梨県産ワインがこれまで以上に評価されるようになりました。
もちろん、山梨県で造られるすべてのワインが「GI Yamanashi」を表記できるわけではありません。
原料、製法、品質基準など、さまざまな条件をクリアする必要があります。
大まかには、山梨県で収穫されたぶどうのみを使用し、醸造から瓶詰めまですべて県内でおこなったワインのみが「GI Yamanashi」を名乗ることができる、とイメージしていただくと分かりやすいでしょう。
これらの基準を設けることにより、山梨県の土地や畑の個性が引き出された、オンリーワンな味わいを表現しています。
そんな山梨県産ワインのさらなる発展のために、山梨県は2019年に「ワイン県宣言」を行いました。
現在では、山梨県には90以上ものワイナリーがあり、造り手の努力と情熱で、品質の高い多種多様なワインが造りだされています。
山梨県産ワインの歴史
山梨県のワインづくりの歴史は、明治時代まで遡ります。
1870年に「山田宥教」という僧侶が、山梨県甲府市の寺院でワインを醸造したのがはじまりです。
寺院の周辺で自生していた山ブドウを使った試験的な醸造が続けられ、後にワインとしての形が見えはじめます。
1874年には本格的なワインが製造されるようになり、東京・日本橋や甲府で売り出されました。
これが山梨県でのワインづくりのはじまりであり、日本ワインの発祥でもあります。
当時は、明治政府が急速な西洋化を推進していたこともあり、ワイン造りもその一環として後押しを受けることに。
その後、1877年に日本全国で初めて「ぶどう酒醸造所(山梨県立葡萄酒醸造所)」が設立されます。
また、明治中期に入り、甲州市勝沼の生産農家がぶどうの価格を安定させるために組合を組織し、「葡萄酒愛飲運動」が始まります。
これにより、農家にとってワインは身近な飲み物となり、よりワイン造りが盛んになっていきました。
ワイナリーの数は徐々に増え、互いに切磋琢磨し、高品質なワイン造りへの挑戦は続きます。
そして約150年の歴史を経て、今では日本で最もワイナリー数が多い県となりました。
産地の特徴
山梨県は、標高の高い山々に囲まれた内陸県です。
日照時間が長く、水はけの良い土地がぶどう栽培に適していて、各地でそれぞれの特性を活かしたワイン造りが行われています。
長い歴史を持つワイナリーが多く、規模もさまざまで、ワインの味わいは多岐に渡ります。
たとえば、山梨県甲斐市にある「サントリー登美の丘ワイナリー」のワインは、調和のとれたエレガントな味わいが特徴で、広大な富士山の姿と目の前に広がる甲府盆地のような、美しい景色がそのまま味わいに現れています。
サントリー登美の丘ワイナリーのおすすめワイン
代表的なぶどう品種
山梨県では、さまざまなワイン用ぶどうが栽培されています。
その中でも、日本固有のぶどう品種である「甲州」と「マスカット・ベーリーA」の栽培面積が多くを占めます。
甲州
日本のワイン用ぶどうで最も生産量が多い「甲州」は、山梨県の代表的なぶどう品種です。
そのほとんどは山梨県で生産され、全国生産量の約90%を担っています。
熟すと明るい紫色になり、太陽の光にかざすと透けるようにきらめく美しいぶどうです。
主に日本で栽培されている固有品種で、すっきりとした辛口のワインに仕上がります。
夏みかんや梨、日本酒、みりんなど「和」を感じさせる香りも特徴的で、繊細な味付けの日本食と好相性です。
マスカット・ベーリーA
「マスカット・ベーリーA」は、日本では「甲州」に次いで2番目に多く栽培されているぶどうで、全国生産量の約50%は山梨県産です。
房と粒が大きく、皮は薄目で、色調の明るいワインに仕上がります。
マスカット・ベーリーAから造られるワインは、フレッシュな果実味と軽いタンニンが特徴で、フルーティーという言葉がぴったりな味わいです。
いちごやキャンディを思わせる甘い香りで、鶏肉や脂ののった白身魚、醤油ベースの料理との相性が抜群です。
11月3日は「山梨ヌーボー」解禁日
ヌーボー(NOUVEAU)とは、フランス語で「新しい」という意味で、ワイン業界では「新酒(当年産のワイン)」のことを指します。
フランスのボジョレー地区で造られる「ボジョレー・ヌーヴォー」というワインを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
山梨県では、世界からも注目されている「甲州」と「マスカット・ベーリーA」で造られた新酒ワインを「山梨ヌーボー」と呼び、毎年11月3日に解禁しています。
本来ワインの熟成には年月がかかりますが、ヌーボーの場合は収穫してすぐに飲むことができるため、その年のぶどうの味わいをいち早く楽しむことができます。
熟成期間が短いため、新鮮なぶどうの果実感を楽しめるのがヌーボーならではの魅力です。
フルーティーな風味に富み、格別の爽やかさを楽しめる山梨ヌーボーは、多くの人々に楽しまれています。
2023年の山梨ヌーボーをご紹介!
[product_in_blog]dhsk23[product_in_blog] [product_in_blog]dhsv23[product_in_blog]山梨県産ワインの受賞歴
山梨県産ワインは日本国内だけでなく、世界的なワインコンクールでも輝かしい受賞歴を誇ります。
世界最大級のワインコンクール「デカンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards)」では、最高位のプラチナ賞を受賞したこともあり、山梨県産ワインの実力とポテンシャルを証明しました。
ワインの専門家によるブラインドテイスティングなど、数多の選考を経て決定される賞は、世界中のワイン愛好家から高い信頼を得ています。
受賞歴をもつサントリーの山梨県産ワイン
[product_in_blog]jp_koshu_2020[product_in_blog]山梨県産ワインの選び方
いざ山梨県産ワインを飲んでみようと思っても、どのワインを選ぶか迷ってしまうかもしれません。
そこで、ここからは山梨県産ワインの選び方を3つご紹介します。
【選び方1】ぶどう品種から選ぶ
山梨では、代表品種の「甲州」と「マスカット・ベーリーA」以外にも、さまざまなワイン用ぶどうが栽培されています。
品種によってそれぞれに個性があり、造られるワインの味わいにも反映されます。
ここでは5つの品種の特徴をお伝えしますので、好みに合った味のワインを見つけてみてください。
甲州 |
穏やかな味わいで、アルコール感は控えめ。 |
マスカット・ベーリーA |
フレッシュな果実味と酸味が特徴。 |
シャルドネ |
シャープな味わいから、リッチでコクのあるタイプまで、多彩な表情があります。 |
プティ・ヴェルド |
しっかりとしたタンニンが感じられる骨格の太い味わい。 |
【選び方2】料理から選ぶ
好みの料理やその日の食事に合わせてワインを選ぶのもおすすめです。
山梨県産のなかでも甲州種でつくられた白ワインは、特に魚介類と相性がよく、お刺身でも火を通した料理でもよく合います。
赤ワインも、海外産のワインに比べて繊細な味わいのお料理に良く合い、魚介類とも合わせやすい傾向にあります。
また、和食ともよく合うので、いつもの食卓に取り入れるだけで、味わいがより一層引き立ち、さらに豊かな食事を楽しむことができますよ。
おすすめの山梨県産ワイン(赤)とペアリング
相性のよい和食 | 相性のよい洋食 |
味付けに醤油を使っている根菜料理、豚のみそ焼きの野菜添え | いわしをグリルしたような香ばしい料理 |
おすすめの山梨県産ワイン(白)とペアリング
相性のよい和食 | 相性のよい洋食 |
寿司、天ぷら(ごま油以外で揚げたもの)、白身魚や貝の刺身(タイやカワハギ、ホタテや生牡蠣など)や焼物、蛤のお椀、鰆の西京焼き、豚肉の味噌漬け | ポトフ、大海老のフライとタルタルソース、チーマ・ディ・ラーパのオレッキエッテ |
おすすめの山梨県産ワイン(ロゼ)とペアリング
登美の丘ワイナリー レイトサマーハーベストロゼ 2022|ワインのみらい
相性のよい和食・洋食 |
夏野菜を使った料理(特にトマトが入っている料理)、バーベキュー |
【選び方3】受賞歴から選ぶ
自分好みの味わいが分からない、なにかおすすめの山梨県産ワインを飲んでみたい・・・。
そんなときには、受賞歴のあるワインを選ぶのがおすすめです。
先ほどご紹介した受賞歴をもつサントリーの山梨県産ワインなど、世界からも認められているワインを、ぜひ堪能してみてください。
まずはこれを飲んでみよう!山梨県産ワイン初心者におすすめのワイン
山梨県産ワインの人気ランキング
この記事の監修者
柳原 亮
2013年度:第9回 JSA全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝
2019年度:第3回 JSAブラインドテイスティングコンテスト準優勝
2020年度:第8回 JSA全日本最優秀ソムリエコンクール クォーターファイナリスト
一般社団法人日本ソムリエ協会認定 ソムリエ・エクセレンス
WSET Lv.3 Award
一般社団法人日本ワイン協会認定 日本ワインマスター
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定 チーズプロフェッショナル